初めての確定申告は、「なにをどうしたらいいの?」と、わからなくなりますよね。
青色申告・白色申告・特別控除・65万円・10万円・申請期間…。
難しそうな言葉が並び、困惑する人も多いのではないでしょうか。
私も、そのなかの1人でした。
そこで今回は、「青色申告とは、どういうものなのか」を解説します。
メリットやデメリットも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「青色申告」「白色申告」は確定申告の種類
結論からいうと、青色申告・白色申告とは、確定申告をおこなう際の申告方法のことです。
選択した方によって、記帳の仕方や控除額(差し引く金額のこと)などが変わってきます。
青色申告とは
国税庁では、青色申告を以下のように定義づけています。
日々の取引を所定の帳簿に記帳し、その記帳に基づいて正しい申告をすることで、所得の計算などについて有利な取扱いが受けられる制度です。
引用元:国税庁|記帳や帳簿等の保存・青色申告
「収入や経費などを自分で記帳し、その記録に基づいて税額を申告・納税する」のは、白色申告も同じですが、「有利な取扱いが受けられる」のが青色申告の特徴です。
【青色申告の特徴】
- 原則、複式簿記での記帳のため複雑(一部、簡易帳簿でもOKです)
- 最大65万円の控除が受けられる
- 帳簿書類の保存期間…5~7年(書類によって異なります)
複式簿記とは、一言でいうと「簿記」です。
「正式な簿記」と呼ばれるものは、複式簿記を指しています。
【複式簿記の仕訳例】
取引日 | 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
4/1 | 取引会社A 仕入れ | 50,000 | 商品A 買掛金 | 50,000 | |
4/25 | 取引会社A 買掛金 | 50,000 | 取引会社A 現金 | 50,000 | |
4/30 | 取引会社B 売掛金 | 100,000 | 取引会社B 売上 | 100,000 | |
4/30 | 取引会社C 売掛金 | 30,000 | 取引会社C 売上 | 30,000 |
借方・貸方があり「仕訳」が必要になるため、簿記の知識がない場合、大変だと感じるかもしれません。
とはいえ、節税ができるのは、大きなメリットです。
白色申告では、節税のメリットはあまり得られません。
白色申告とは
白色申告とは、比較的簡単な方法で記帳をし、その記録に基づいて税額を申告・納税する方法です。
自分で記帳し、申告・納税するのは青色申告と変わりませんが、白色申告では「単式簿記」で記帳します。
比較的簡単に記帳できる点が、白色申告の最大の特徴です。
【白色申告の特徴】
- 単式簿記での記帳のため手間が少ない
- 青色申告に比べて提出書類が少ない
- 帳簿書類の保存期間…5~7年(書類によって異なります)
単式簿記とは、簡略化された簿記を指します。
「家計簿に近いもの」というと、イメージしやすいかもしれませんね。
簡略化されていることから、「簡易な簿記」とも呼ばれています。
【単式簿記の例】
日付 | 項目 | 詳細 | 入金額 | 支出額 | 残額 |
4/1 | 交際費 | 取引先Aと飲食店でランチ | 5,000 | 250,000 | |
4/20 | 新聞代 | 〇〇新聞 | 3,200 | 246,800 | |
4/25 | 収入 | 商品売上 | 20,000 | 266,800 |
簿記の手軽さで考えると、白色申告が魅力的です。
しかし、青色申告には「大変な分だけ特典がある」のに対し、白色申告にはありません。
そのため、「青色申告にした方がお得だよ」「青色申告が有利」と、いわれています。
青色申告の対象者
青色申告をおこなえるのは、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかを得ている人です。
その他の条件と併せて紹介していきます。
事業所得・不動産所得・山林所得を得ている
所得税は、全部で10種類あります。
- 給与所得…給与や役員報酬、賞与などの所得
- 退職所得…退職によって勤務先から受け取る所得(退職金や一時金など)
- 事業所得…事業をおこなうことで得た所得(製造業や小売業、サービス業や自営業など)
- 不動産所得…不動産の貸付によって得た所得(土地、アパート、事務所を貸すなど)
- 山林所得…松や杉など山林の譲渡によって生じる所得(伐採や立木のままでの譲渡など)
- 譲渡所得…資産を譲渡した際に生じる所得(土地や不動産、株式などを譲渡する)
- 利子所得…預貯金や国債、社債などの利子
- 配当所得…株式の配当金や投資信託の分配金による所得
- 一時所得…対価ではなく、一時的な性質の所得(懸賞・福引の賞金品、生命保険の満期保険金など)
- 雑所得…上記9種類の、どこにも該当しない所得(公的年金や税金の還付金、個人年金保険など)
このうち、事業所得・不動産所得・山林所得(赤字で記した3つの所得)のいずれかを得ている人が青色申告の対象者です。
ライターやデザイナーとして活動している個人事業主・フリーランスの方も、事業所得が発生しているため、対象者となります。
「青色申告承認申請書」を提出している
青色申告をするためには、「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。
*国税庁のホームページからダウンロードできます。
【提出期限】
- 継続・白白申告からの切り替え…申告をしようとする年の3月15日まで
- 1/15以前の新規開業…申告をしようとする年の3月15日まで
- 1/16以降の新規開業…事業を開始した日から2か月以内
【提出先】
- 納税している管轄の税務署
【提出方法】
- 持参または郵送
期限を過ぎた場合の「罰則」などはありませんが、その年に青色申告特別控除を受けることはできません。
その年は白色申告での手続きになり、青色申告の適用は翌年以降です。
「節税したい」とお考えの際は、期限内に提出しましょう。
「開業届」を提出している
青色申告をするためには、「開業届」の提出も必要です。
開業届とは、「新たに事業を始めました!」と税務署にお知らせするための手続きです。
正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」。
*開業届も国税庁のホームページからダウンロードできます。
開業届の提出期限は、事業を開始した日から1か月以内。
提出先や提出方法は、青色申告承認申請書と同じです。
開業届出書は、青色申告承認申請書に比べて期限が短いため、開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出すると効率がいいかもしれませんね。
青色申告のメリット
青色申告には、魅力的なメリットが複数あります。
そのなかでも、とくに大きなメリットを3点紹介します。
- 最大65万円の特別控除が受けられる
- 赤字を3年間繰り越せる
- 家族への給与を経費にできる
最大65万円の特別控除が受けられる
青色申告をおこなうと、最大で65万円の特別控除が受けられます。
青色申告には、10万円・55万円・65万円、3つの控除額があります。
複式簿記で帳簿づけをおこない申告すると、55万円の控除が受けられます(青色申告特別控除)。
くわえて、「e-Tax(電子申告)を利用して申告する」といった条件を満たすと、65万円の控除が受けられます。
その他の場合、控除額は白色申告と同額の10万円です。
「控除を受けられる」とは、課税対象の所得税から、一定の金額を差し引くことをいいます。
税金は、所得税をもとに計算されているので、「所得額が減る=支払うべき税金が減る」ということ。
結果、所得税や住民税が安くなる=節税につながるメリットがあります。
帳簿は複雑ですが、65万円の控除を受けられるのは、大きなメリットですね。
赤字を3年間繰り越せる
赤字を3年間繰り越せるのも、青色申告の利点です。
開業した年はとくに、赤字になる個人事業主・フリーランスの人も少なくないのではないでしょうか。
青色申告書を提出すると、事業所得が赤字になった際、翌年以降最長で3年間赤字を繰り越せます。
【青色申告の赤字繰り越し例】
前年50万円の赤字だった → 翌年30万円の黒字 → 相殺されて20万円の赤字となり課税されない
→ さらに翌年20万円の黒字 → 赤字20万円と相殺 → 0円となり課税されない → 翌年から課税される
また、前年分の所得税の還付を受けることも可能です。
赤字を最長3年に渡って繰り越せたり、繰り戻して還付を受けたりできるのは、青色申告の特典といえます。
白色申告には赤字繰り越しはないの?
白色申告では、赤字がでた際、申告する義務がないから課税されないよ。
ただ、繰り越しはないの。
上記の例で説明すると、青色申告は3年間に渡って「赤字の相殺」ができたけど、白色申告の場合は1年ごと。
【白色申告の赤字例】
- 1年目…50万円の赤字 → 申告の義務なし → 課税されない
- 2年目…30万円の黒字 → 申告する → 課税の対象
- 3年目…20万円の黒字 → 申告する → 課税の対象
帳簿の負担や、所得額なども考慮して、自分に合った方を選ぶといいかもしれませんね。
家族への給与を経費にできる
配偶者や親戚が事業の手伝いをしている場合、支払った給与を必要経費にできるのも青色申告ならでは。
青色事業専従者給与といい、支払った給与を必要経費として計上できます。
ただ、青色事業専従者給与の適用には、いくつかの条件があります。
- 3/15までに、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すること
- 給与を支払われている人は、青色申告者と生計を同じにしている配偶者または親族(15歳以上)であること
- 給与額が対価に対して妥当であること
- 実際に給与を支払っていること など
さらに詳しく知りたい方は国税庁のホームページを確認してみてくださいね。
青色申告のデメリット
お得感のある青色申告ですが、デメリットもあります。
デメリットを2つ紹介します。
- 手間がかかる
- 申請書に提出期限がある
手間がかかる
青色申告は白色申告に比べて帳簿づけに手間がかかります。
仕訳の種類が多数あるほか、損益計算書、決算書といった、正規の簿記の原則に従った会計処理が必要になってくるため、簿記の知識がないと難しく感じるかもしれません。
必要経費の対象となるものには、証拠として「領収書」などの保存も必要です。
面倒くさがって、1年分貯めてしまうと、仕訳をするだけで丸1日・2日かかってしまうケースも…。
青色申告は、帳簿が複雑で手間がかかる点がデメリットといえます。
申請書に提出期限がある
青色申告をおこなうためには、「青色申告承認申請書」の提出が必要ですが、期限が設けられています。
とくに注意しなければならないのは、年度の途中で新しく開業した場合です。
1/16以降に新しく事業を始めた際、青色申告承認申請書の提出期限は開業から2か月以内です。
「期限短いなぁ」と思うかもしれませんが、2か月以内に申請すると、開業1年目から青色申告が適用されるということ。
たとえば、令和元年1/16以降に起業し、2か月以内に申請したとすると、令和元年度分から青色申告が可能なのです。
白色申告から青色申告に切り替える際は、「青色申告をしようとする3/15まで」が期限となります。
お得な特典を受けるためにも、期限には気をつけておきたいですね。
確定申告は青色申告がおすすめ!会計ソフトをうまく使って節税しよう
確定申告をする際には、青色申告か白色申告、どちらかで申告することになります。
お手軽さは白色申告ですが、節税面や特典を考えると、やはり青色申告がおすすめです。
「帳簿が…」と心配な人も多いのではないかと思いますが、便利な会計ソフトが多数あります。
マネーフォワード、freee、弥生会計、勘定奉行、会計王…。
初心者向きから本格的な会計まで、さまざまなソフトが揃っています。
また、税理士さんによる無料相談会などもありますね。
会計ソフトや相談会などをうまく使って、かしこく節税をしていきましょう。
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